三男が自分の罪を告白する
しげつぐは、二人の兄に告白することを決めた。
そのとき、二人の兄は二酸化炭素を探して、河原の石をめくっていた。
「これは二酸化炭素か?」
「いや、ダンゴムシだろう」
「兄さんたち、話があるんだ」と、しげつぐは切り出した。
「おどろかないで聞いてほしい。僕は、二酸化炭素を吐きだしている」
この告白に二人の兄は衝撃をうけた。
「おまえ・・・いつから・・・?」
「わからない。でもたぶん、もう長いこと吐いてると思う」
「警察に行くか?」
ひでつぐのこの発言に、まさつぐはカッとなった。いくら二酸化炭素を吐いていたからといって、かわいい三男をあっさりと警察に売ろうとするとは、なんと残酷な人間なのか! ひでつぐはまさつぐの胸ぐらをつかんだ。まさつぐもひでつぐの胸ぐらをつかんだ。
二人は取っ組み合いのケンカをはじめた。河原には春の陽光が降り注いでいた。しばらく二人のケンカが続いた。しげつぐは兄たちのケンカを手に汗にぎって見ていた。技と技の応酬だ。兄さんたちは本当にすごい。
やがてケンカは終わった。そのタイミングで、しげつぐは切り出した。
「兄さんたち、話があるんだ。僕は、二酸化炭素を吐きだしている」
「おまえ・・・いつから・・・?」
三人の記憶力はこの程度である。
「二酸化炭素というのは、地球温暖化の原因になるものなんだぞ」
「それを吐くということは、地球が温暖化するということなんだぞ!」
二人は、三男の暴挙がゆるせない。
「おまえ、どれくらい二酸化炭素を吐いたんだ」
「わからない。でもたぶん、もう大量に吐いてしまった後だと思う」
二人は沈黙する。
「意外なところに犯人がいたな」とひでつぐが言う。
「かわいい弟とはいえ仕方ない」とまさつぐが言う。