もしも三人のアホが地球温暖化問題を解決しようとしたら

上田啓太 上田啓太


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われわれ人類は多くの問題を抱えている。

たとえば地球温暖化である。これは問題である。しかしまじめに考えると大変である。専門家の意見を読んでいると頭が痛くなる。面倒になって酒を飲んで眠りたくなる。酒を飲んで寝てしまえば、翌朝には解決してるんじゃないか?

もちろん解決していない。まあいい。どうせ偉いやつらがなんとかするだろう。偉いやつらはそういうことをなんとかするから偉いのである。私は地球温暖化とか知らん。エコバッグ使ってるしそれでいいだろ。もう寝る!

私はそんな人間である。

しかし、ノリと勢いだけで地球温暖化を解決しようとする人間を見てみたい。だからひとつの物語を考えた。三人の男が、地球温暖化を解決しようと頑張る。ひでつぐ、まさつぐ、しげつぐという三人の兄弟である。三人は完全なるアホである。しかしアホなりに頑張るのである。

私は、この三人に夢を託したい。

三兄弟が地球温暖化を知る

ひでつぐ、まさつぐ、しげつぐの三兄弟は、これまでノリと勢いだけで生きてきた。しかし今、地球温暖化という事実を知って、わけもなく胸が熱くなった。地球に助けをもとめられた気がした。僕たちはいつも地球を踏んでいた。なのに地球は文句のひとつも言わなかった。その地球がピンチだ。僕たちは立ち上がらなければならない。

こうして挑戦がはじまった。三人はさっそくリサーチを開始した。地球温暖化の原因は何だと思いますか! 道ばたで通行人たちに尋ねてまわった。大半の人間は無視をした。馬鹿には関わらないと決めていたからである。しかし、気のいい一人の老人は答えてくれた。

「よく知らんが、二酸化炭素が問題だとかいうわな」

なるほど、とひでつぐは考えた。なるほど、とまさつぐも考えた。二人は二酸化炭素が何なのかを知らなかった。だから「なるほど」とだけ思ったのだ。しかし三男のしげつぐは深い衝撃に打たれていた。しげつぐは三人の中でいちばん賢かったので、自分は二酸化炭素を吐いていると知っていたのである。僕が原因で地球は温暖化している、としげつぐは思った。犯人は自分だった。

「地球温暖化の全責任は自分にある!」

しげつぐは、人類で自分だけが二酸化炭素を吐いていると考えていた。三人の中でいちばん賢いと言っても、しょせんはその程度なのか。

三男が自分の罪を告白する

しげつぐは、二人の兄に告白することを決めた。

そのとき、二人の兄は二酸化炭素を探して、河原の石をめくっていた。

「これは二酸化炭素か?」

「いや、ダンゴムシだろう」

「兄さんたち、話があるんだ」と、しげつぐは切り出した。

「おどろかないで聞いてほしい。僕は、二酸化炭素を吐きだしている」

この告白に二人の兄は衝撃をうけた。

「おまえ・・・いつから・・・?」

「わからない。でもたぶん、もう長いこと吐いてると思う」

「警察に行くか?」

ひでつぐのこの発言に、まさつぐはカッとなった。いくら二酸化炭素を吐いていたからといって、かわいい三男をあっさりと警察に売ろうとするとは、なんと残酷な人間なのか! ひでつぐはまさつぐの胸ぐらをつかんだ。まさつぐもひでつぐの胸ぐらをつかんだ。

二人は取っ組み合いのケンカをはじめた。河原には春の陽光が降り注いでいた。しばらく二人のケンカが続いた。しげつぐは兄たちのケンカを手に汗にぎって見ていた。技と技の応酬だ。兄さんたちは本当にすごい。

やがてケンカは終わった。そのタイミングで、しげつぐは切り出した。

「兄さんたち、話があるんだ。僕は、二酸化炭素を吐きだしている」

「おまえ・・・いつから・・・?」

三人の記憶力はこの程度である。

「二酸化炭素というのは、地球温暖化の原因になるものなんだぞ」

「それを吐くということは、地球が温暖化するということなんだぞ!」

二人は、三男の暴挙がゆるせない。

「おまえ、どれくらい二酸化炭素を吐いたんだ」

「わからない。でもたぶん、もう大量に吐いてしまった後だと思う」

二人は沈黙する。

「意外なところに犯人がいたな」とひでつぐが言う。

「かわいい弟とはいえ仕方ない」とまさつぐが言う。

三兄弟は自首する

三人は河原を出ると、近くの交番に出頭した。うちの弟は地球温暖化の原因だった。弟は、口から二酸化炭素を出してしまう病気なのだ。もちろん責任は取ると言っている。死刑なのは間違いないだろう。しかし、それならばわれわれ二人の兄も死刑になる。死ぬときはいっしょだと誓いあったからだ。警察官のみなさん、どうか、地球温暖化罪でわれわれを逮捕してください。

「春だなあ」と警察官は思う。

「春はこういうのが多いんだ。しかし三人も同時に来るのはめずらしいぞ」

そして警官はあくびまじりに言う。

「逮捕しないから帰りなさい。あと、二酸化炭素は弟さんだけじゃなく、お兄さんたち二人も吐いてるよ」

「じゃあどちらにしろ、僕たちは全員死刑なんですか」と長男が真剣な顔で言う。

「ていうか僕も吐いてるしね」と警察官が言う。

「みんな吐いてるよ、二酸化炭素くらい」

三人は交番を出ると、ふたたび街を歩きはじめる。その顔は思い詰めている。こうしているあいだにも、自分たちは二酸化炭素を吐いている。どんどん地球は温暖化している。考えてみれば、このあいだまで寒かったのに、いまはものすごくあたたかい。桜まで咲いてしまった。なぜ気づかなったのだろう。すでに地球は温暖化していたのだ。その証拠がこの桜だ!

三兄弟は地球にやさしくしようと決める

三人は、河原で川の流れを見つめている。まわりでは花見客たちが楽しそうにしている。

「地球にやさしくしよう」

ひでつぐが言った。まさつぐとしげつぐは、うなずいた。自分たちが二酸化炭素を吐いてしまうのならば、せめて、地球にやさしくしよう。徹底的に地球にやさしくしよう。地球のことをほめたたえよう。それが三人のスローガンになった。

「地球にやさしく!」

ということで、その後の三人は、火星にきびしくしている。

三人で街を歩けば、火星の悪口ばかりだ。空を見上げると、火星のありそうな方向にむかって、ぼろくそ言っている。三人の火星に対するきびしさは、ほとんど鬼教官のようだ。しかし地球に対しては、仏さまのようなやさしさを見せている。地球温暖化はとめられない。しかし、地球にやさしくすることはできるし、火星にきびしくすることもできるのだ。火星はクソだ! それに比べて、地球のすばらしさといったら!

三人は笑顔になった。

まわりの人間たちは、「春だなあ」と思っている。

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