もしも私が小学生女子で、二人の男子に口説かれたらどうしよう?

上田啓太 上田啓太


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最近の小学生はマセている。普通にクラスメイトと恋愛している。彼氏・彼女のいる子も多い。そんな話をたまに聞く。

しかし私には、「しょせん小学生だろ」というナメた気持ちがある。だってあいつら、ランドセルを背負ってるんでしょう? 席替えで緊張してるんでしょう? 廊下を走って先生に怒られてるんでしょう? 制服にチョークの粉が付いてるんでしょう?

そんな小学生に「恋愛」とか言われてもな、という感じである。私にとって小学生とは、ランドセルを軽くすることに命を賭ける存在だ。教科書とノートを学校に置きっぱなしにする存在だ。それを「置き勉」とか言ってる存在だ。「置き勉」とか言ってる人間に恋愛ができますか。

しかしまあ、実態は知らない。本当にマセているのかもしれない。恋愛を楽しんでいるのかもしれない。男子はがんばって女子を口説いているのかもしれない。じゃあ、どんなふうに口説いているのか? この記事ではそれを想像してみたい。

とりあえず、私が小学生女子だったとしてみよう(ひどすぎる仮定ですが)。クラスには気になる男子が二人いる。アキラくんとツトムくんである。二人のほうも私を意識しているようだ。

アキラくんはドッジボールが得意で、クラスでいちばん足が速い。元気がウリである。一方のツトムくんは学級委員長で、メガネをかけている。こちらは勉強ができるタイプ。この二人がそれぞれのやりかたで、私を口説いてくるわけである。

アキラとツトム、それぞれの口説きかた

優等生だけあって、ツトムくんの口説きかたはシャレている。たとえば席替えという状況を考えてみよう。教師が「今日は席替えをする」と発表するや否や、隣の席のツトムくんは言うのである。

「どれだけ席替えしても、きみと巡り合うから・・・」

こういうことを平気で言う男子である。私のことを「きみ」と呼ぶ。とても小学生とは思えない口説きかたである。冬でも半ズボンのくせに、キザ。正直なところ、これはときめきよりも、うっとうしさが先行しそうである。

一方のアキラくんは情熱的なタイプである。勉強は不得意だ。そもそも授業をちゃんと聞いていない。宿題もろくにやってこない。しかし持ち前の明るさでなんとなく許されている。そんなアキラくんが言うのは次のセリフである。

「ランドセルだけでも重てぇのに、恋心まで背負っちまった・・・」

これは、けっこうキュンとする。よく考えると意味は全然分からないんだが、熱いパッションを感じる。どちらかというと、私はキザな口説きかたよりも情熱的な口説きかたに弱いのかもしれない。

「ちくしょう! おまえへの気持ちだけは置き勉できねえ!」

アキラくん、好きである。なんというか、絶妙にバカっぽいところが素敵である。まさに半ズボンを履いている人間の口説きかたである。とにかくランドセルの重さばかり意識している。女を口説くときもランドセル中心に発想している。

そんなアキラくんは、算数の時間になると頭をかかえる。

「くそっ・・・九九の答えが全部おまえになっちまう・・・」

これも、よくよく考えると意味は分からない。どれだけ人を好きになろうが、さすがに九九くらい普通に言えるのでは? 九九の答えが相手の名前になることあるか? そう考えると終わりである。ここはやはり、アキラくんの勢いにやられてしまいたい。

アキラ有利か? ツトム逆転か?

ツトムくんのことも忘れてはいけない。私を見つめてクールに言ってくる。

「ねえ・・・、ぼくの時間割は、きみで埋まってしまったよ?」

ううむ、という感じである。どうも響いてこない。私はツトムくんに厳しすぎるだろうか。しかしツトムくんは理屈が先行している気がするのだ。いまいちウソくさい。「時間割がきみで埋まった」と言いつつも、普通に一時間目の算数の予習はしてる気がする。あれ、一時間目、私じゃないんだ? そんなイヤミを言いたくなる。

ツトムくんは、分度器と三角定規で恋愛に取り組もうとしている印象だ。それならば、ノリとガッツだけでなんとかするアキラくんのほうが、私は好きである。

「おれっ、おまえのためなら、このチョーク食えるぜっ!」

もっとも、これはさすがにバカすぎて減点である。アキラくんはこういうところがある。たまに、本当に勢いだけで口説いてくるのである。チョークを食べてもおなかを壊すだけだし、やめてほしい。第一、どうしてチョークを食べることが私のためになるのか。そんな求愛行動は昆虫だってやらないだろう。

それならば、ツトムくんが細い指先でチョークを持ち、カッカッカと黒板に文字を書いていく姿のほうが、私はしびれる。知的なツトムくんの秘めたるパッション。これを見てみたい。

知的なツトムくんの秘めたるパッション

私は、全員分のノートを持って移動教室から戻っている。先生に言われたのである。しかし、途中の廊下で私はつまずいてしまう。あたりにノートが散らばってしまう。ひざをすりむいて血も出てしまう。それで私は泣き出してしまう。このとき、廊下の向こうからツトムくんが必死で走ってくるのである。そして私のひざの手当をすると、まじめな顔で言うのだ。

「廊下は走らないって決めてた。きみの泣き顔を見るまでは・・・」

これは、ちょっとやばい。キュンとする。ツトムくんに惹かれつつある自分がいる。クールだと思っていたツトムくんが、廊下を走るほど私のことを心配してくれた。学級委員長なのに、絶対に廊下を走っちゃいけない立場の人間なのに、走ってくれた。

結局、私はこういうベタなものに弱いんだろうか。

一方のアキラくんは、同じ状況で言う。

「おれっ、おまえのケガがなおるなら、このチョーク食えるぜ!」

ここにきて、アキラ株の急落が懸念される。もしかして、この男はただのバカなのか。チョークを食べたところで私のケガは治らない。そんなところから教えなくてはならないのか? これは付き合っていく上でしんどい。はじめのうち、私はアキラくんの勢いに魅力を感じていた。しかしここまでチョークを強調されると困ってしまう。

やはり、ツトムくんだろうか。はじめのうち、ツトムくんはキザすぎると思っていたが、廊下を走ってまで、私を助けにきてくれたじゃないか。しゃれた言い回しは照れかくしで、ツトムくんの根っこには、意外とストレートなものがあるのかもしれない。それに、将来的に出世するのも、優等生のツトムくんな気がする・・・。

最終結論

私は、ツトムくんと付き合うことに決めた。打算的な女だと思われたかもしれない。そう思われても仕方ない。しかし私は、ツトムくんの秘めたるパッションを信じることにする。そしてアキラくんに関しては、泣いている私の前でチョークを食べようとしたときに、元気とバカの境界線上を、バカ側に転げ落ちた。あの人とは、真面目なお付き合いができない。

以上である。

無事に結論が出てよかったが、問題は、実際の私は三十二歳の男だということである。この事実に気づいてしまうと、どうしようもない。アキラくんもツトムくんも、私の頭のなかにしか存在しない。これは致命的である。何故、こんな文章を書いてしまったのか。もしかして、朝飯にチョークでも食べたか?

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