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職歴なんかなくても、自信まんまんでいれば面接に受かるのでは?

上田啓太 上田啓太


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職歴の説明

履歴書がカスみたいな内容だったことで、面接官は勢いを取り戻し、定番の質問をしてくる。

「現在の年齢になるまで、一体、何をされていたのですか?」

職歴なしにとって一番の鬼門である。

ここで私は、日本の四季の話をはじめる。

「春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来る。日本人に生まれてよかった、と思える瞬間ですね。しかし私は、とくに冬が好きなのです。自分が雪国に生まれたからかもしれません。私の両親は雪国で育ちました。そんな二人が恋をして、私が生まれた。幼少期に過ごした街の情景を今でも覚えています。あのころ、私は故郷の雪景色を見るたびに思いました。いつか履歴書を書くことになったとき、自分の職歴も、これくらい真白であれたら――と」

面接官はあぜんとする。意味がわからないからである。こんなものは言い訳にすらなっていないからである。すかさず私は追いうちをかける。

「生まれた街のあの白さをあなたにも見せたい・・・」

唐突にGLAYの『Winter,again』の一節を引用するのである。要するに、生まれた街のあの白さをあなた(=面接官)にも見せたいと思ったからこそ、学校を出た後は何の仕事もせず、必死で経歴を真っ白に保ってきたという理屈なのである。

書いていて自分でも思うが、こんなものを理屈と呼ぶのは、理屈に失礼である。しかし、だからこそ良い。ちゃんとした理屈には、ちゃんとした反論ができてしまう。しかし理屈にすらなっていない理屈には、反論することもできないのである。

すでに面接官は、「ええと・・・」と「ああ~」しか言えなくなっている。言語能力がいちじるしく低下している。そのあいだも仁王立ちを維持しつつ、適当なタイミングでマントをひるがえしておけばよい。

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