職歴なんかなくても、自信まんまんでいれば面接に受かるのでは?

上田啓太 上田啓太


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職歴なし。

面接を受ける際、これは非常にまずいことだとされている。履歴書の空白部分を面接官に突つかれる。一体、いままで何をしていたのか? そう問い詰められて、オドオドしてしまう。そんなイメージは広く共有されている。

しかし、職歴がなかろうが、堂々としていれば意外とイケるんじゃないのか。むしろ卑屈になってしまうことが問題なのではないか。圧倒的な自己肯定感さえあれば、職歴など一切なくても、面接には受かるんじゃないのか。これが私の仮説である。

以下、イメージトレーニングの結果を報告したい。

入室と挨拶

まずは面接時の服装だが、スーツの上に真紅のマントをはおっていく。頭には王冠である。イメージとしては、ビジネスマンと帝王の融合だろうか。自信まんまんでふるまうには、見た目も重要なのである。

そして、面接にはわざと15分遅刻していく。もちろんオドオドしてはいけない。背筋を伸ばし、堂々と、祖国に凱旋する気分で、ゆっくりと入室する。面接官は三人である。もちろん不機嫌である。私が遅刻したからである。

「13時からの予定でしたが?」

嫌味たっぷりに言われる。ここで一言である。

「ヒーローは遅れて登場するものでしょ?」

そして、すっと手を差し出し、握手を求める。

「祝福しますよ、僕という人材に出会えたあなたたちを」

これが冒頭の一発である。それで着席となるのが通常の流れだが、ここでは、自分のために用意されていたパイプ椅子をていねいに折り畳む。帝王はパイプ椅子になど座らないからである。当然のように折り畳んでしまえばよい。それから面接官の目を見つめて言う。

「すみませんが、玉座以外は受け付けない体質ですので」

そしてマントをひるがえす。この後の面接は、腕を組んで仁王立ちのまま進行すると思ってほしい。

履歴書の提出

人間はパターンにしたがう生き物である。面接官もまたパターンにしたがって質問する。しかし、初っ端でこれだけ予想外のことを連発されると、もはや面接官は混乱のきわみにある。よって、主導権はこちらにある。絶句した面接官に対し、手をパンパン叩いて言えばよい。

「ほら、ボヤボヤしてないで、面接、面接!」

それからウインクする。

「時は金なり、ってね」

遅刻しておいて言うわけである。むこうは動揺をおさえながら、「で、では履歴書を・・・」と言うのがやっとである。すぐに私は指をパチンと鳴らす。

すると、私のしもべが入室して、いそいそと履歴書を運んでくる。自分で渡すのではなく、しもべに履歴書を運ばせるのである。しもべはすぐに退室する。「ご苦労」とだけ言っておけばよい。

ちなみに、履歴書にはカスのようなことしか書いていない。そこでは嘘はつかない。職歴の欄は完全な空白だ。資格の欄には「英検5級」とだけ殴り書きしてある。まさにカスofカスの履歴書である。経歴詐称はダメなのである。態度だけでなんとかするのが今回のテーマだからだ。

職歴の説明

履歴書がカスみたいな内容だったことで、面接官は勢いを取り戻し、定番の質問をしてくる。

「現在の年齢になるまで、一体、何をされていたのですか?」

職歴なしにとって一番の鬼門である。

ここで私は、日本の四季の話をはじめる。

「春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来る。日本人に生まれてよかった、と思える瞬間ですね。しかし私は、とくに冬が好きなのです。自分が雪国に生まれたからかもしれません。私の両親は雪国で育ちました。そんな二人が恋をして、私が生まれた。幼少期に過ごした街の情景を今でも覚えています。あのころ、私は故郷の雪景色を見るたびに思いました。いつか履歴書を書くことになったとき、自分の職歴も、これくらい真白であれたら――と」

面接官はあぜんとする。意味がわからないからである。こんなものは言い訳にすらなっていないからである。すかさず私は追いうちをかける。

「生まれた街のあの白さをあなたにも見せたい・・・」

唐突にGLAYの『Winter,again』の一節を引用するのである。要するに、生まれた街のあの白さをあなた(=面接官)にも見せたいと思ったからこそ、学校を出た後は何の仕事もせず、必死で経歴を真っ白に保ってきたという理屈なのである。

書いていて自分でも思うが、こんなものを理屈と呼ぶのは、理屈に失礼である。しかし、だからこそ良い。ちゃんとした理屈には、ちゃんとした反論ができてしまう。しかし理屈にすらなっていない理屈には、反論することもできないのである。

すでに面接官は、「ええと・・・」と「ああ~」しか言えなくなっている。言語能力がいちじるしく低下している。そのあいだも仁王立ちを維持しつつ、適当なタイミングでマントをひるがえしておけばよい。

自己アピール

「ええと、なにか、自己アピールでもあれば・・・」

面接官は言う。一刻もはやく終了したがっている。

ここで私は、お母さんのおなかの中にいた頃の話をする。

「自己アピールは好きではないので手短に終わらせます。母によると、私は胎児の頃から他の赤ん坊とは違っていたそうです。大人になってから聞いた話です。妊娠中の母の大きなおなかを、父が愛おしそうに見つめていました。その時、母がなにかを感じて、父に言ったのです。

『あっ、蹴った・・・』

『おなか・・・?』

『ううん、内定・・・』

このとき蹴ったのが、トヨタの内定でした。

『あっ、また蹴った・・・』

『トヨタ・・・?』

『ううん、今度はJAL・・・』

その後も私は、母の胎内で100社以上の内定を蹴ったそうです。そんな私が、はじめて内定を蹴らないことになるかもしれない。本日の面接中、そんなことを感じました。以上です」

もはや面接官は、頭痛薬を飲むことしか考えていない。それでも一応、定型文で締めてくる。

「では、最後になにかあれば・・・」

「みなさん、財宝見つけたトレジャーハンターみたいな顔してますよ」

ウインクして終了。あとはマントをひるがえし、堂々と立ち去ればよい。

以上のことを実践すれば、確実に落ちる。そう、落ちるのである。書いているうちに不採用を確信した。みなさんは絶対、真似しないように。

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