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飛ぶ鳥を落としてマウンティングしている企業訪問(3)「catch」編

街クリ編集部 街クリ編集部


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街クリ編集長西島と編集部員小野が、国内の、完全なる勝ち組クリエイティブ企業に伺って、ギリギリのラインまで根掘り葉掘りお話をお伺いするこの企画。第3回目は何と西島編集長が就活時代からのお知り合いというcatchのクリエイティブディレクター・コピーライターの福部明浩さんに話をお伺いします。

catch
2013年設立。2014年、ADC賞、ACC賞シルバー2作品、テレビ広告電通賞。2013年、ACC賞ゴールド、ブロンズ、TCC賞、ギャラクシー賞、テレビ広告電通賞、交通広告賞グランプリ。絵本創作の分野でも、絵本屋さん大賞などを複数受賞。事業経営とコンサルティングのリヴァンプと業務提携。
参照:catch

福部明浩(ふくべ・あきひろ)
クリエイティブディレクター/ コピーライター
1976年 生まれ。京都大学工学部を卒業し、1998年に博報堂へ入社した後、2013年に独立。株式会社catchを設立した。2015年 9月30日まで博報堂との専属契約中。
参照:catch

西島知宏(以下、西島) めっちゃ久しぶりですよね?

福部明浩(以下、福部) 久しぶりやね。元気? どう仕事?

西島 ぼちぼちやってます。あ、写真も撮っていいですか?

福部 良いけど。カメラの方、見ないでいいんでしょ?

西島 大丈夫です。時々巨大なろくろを回してもらえれば(笑)。


https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/07/new_P1010743.jpg
ろくろの回し方を説明する西島編集長

最近の仕事について

西島 早速ですが、最近のお仕事についてお伺いしてもいいですか?

福部 最近でいうと炭酸飲料MATCHとか、カロリーメイトとか、EDWINジャージーズとかかな。CMが多い。というかCMがあるやつしかやってない、気づけば。

Reference:YouTube

Reference:YouTube

Reference:YouTube

 

西島 カップヌードルの錦織圭君のも話題になりましたよね?

Reference:YouTube

西島 これはどうやって企画したんですか?

福部 錦織くんの企画の場合、最初から彼が刀でボールを打つしかないと思ってた。SAMURAI,FUJIYAMA,CUPNOODLEだし。ラケット一本で世界と戦うSAMURAIにしようと。問題はその刀が真剣なのか、木刀なのかくらいで。ちなみに真剣だと、普段のラケットとあまりに重さが違うので、やめた。彼の手首は、日本の宝なので。基本カップヌードルの企画は一年間、俺と大八木翼と柿崎裕生で話し合いみたいな感じで進めてた。

西島 発注元はどこが多いんですか? やはり古巣の博報堂ですか?

福部 博報堂の営業からくる仕事が6割。辞めて2年間は専属契約になってたから。1年目までは博報堂だけだったけど、2年目から、大広であれば博報堂DYだからいいよっていう話になった。読広はやったことないけど、大広の九州の仕事は今一個してるんだけどそれぐらいかな。

西島 クライアント直っていうのもあるんですか?

福部 今一個やってるけど、どうなるかな? 代理店がいてくれた方が楽なんだよね。

独立の経緯

西島 福部さんて良いパパってイメージで、独立しなそうな方だと思ってたんで、最初聞いた時、びっくりしました。

福部 博報堂って辞める文化がすごくあって。最初師匠は前田知巳さんで、一番兄弟子が斉藤賢司さん。その下に林さんがいて呉さんがいて俺がいて。俺は4番弟子で。上の人達が順番に辞めていったから、あれ? 次俺!? みたいなのはあったかな。

西島 独立したのは、外から広告業界を変えてやるぜ的な決意みたいなものもあったんですか?

福部 正直、そんな大それた志は皆無(笑)。けど月並みだけど、人生1回だしなと思って。catchに出資してくれてるリヴァンプとは博報堂にいる時から仕事をやってて、従来のクリエイティブ外の仕事が増えていく時に博報堂にいたら難しいって思ったかな。
 

リヴァンプ
2005年設立。飲食店、ブライダル関連、ファッション、教育、等様々な事業テーマにおいて経営支援サービスを行う経営コンサルティング会社。資本参加、経営受託、マーケティング改革、ITによる業務改善なども行っている。
参照:リヴァンプ

 

西島 仕事ベースで言えば、やはり満島ひかりさんのカロリーメイトの大ヒットがきっかけですか?
 

Reference:YouTube

福部 小さなきっかけが色々あるけど一番わかりやすいのは、満島ひかりさんのやつだね。その前の余震として手越くんのMATCHを監督の永井聡さんとやった時に、Z会の時グラフィック面白いなって思ったように、CMが面白いなって思った。それが会社入って10年目のときかな。やっぱ10年かかる、CMは。監督やクライアントとの関係とかCMの作り方とかコンテの作り方とかわかるまでに10年。

西島 電通はコピーライターだとCMの企画をやらなかったりするんですが、博報堂は?

福部 10年かかったっていうのは、CDになってスタフィッングも自由にできるようになったというのもあるかな。Z会の時も秋山崇一さんという先輩ADと2人でほぼやってた。年下だけど自分がCDっていう気持ちでやってた。自分がCDじゃないと俺サボるなっていうのが分かってたから(笑)。CDになったのは11年12年目のときかな

西島 今はだいぶん違うみたいですけど、電通だと前まではCDになるのって早くて40歳オーバーとかですよ。

福部 そんなに? 博報堂は最初に信頼されるのは4~5年では無理やね。自分がCDするようになったからよかったなって思うことは結構あるね。プランナーだけやってると小さくなるなって感じる。日テレの「0テレ」キャンペーンの時にはCDになってたかな。

クリエイティブ作業の進め方

西島 制作のスタッフィングは全部福部さんがやるんですか?

福部 全部俺がするよ。博報堂から来た仕事はもちろん博報堂のクリエイティブスタッフを使える。だけど博報堂じゃない時に博報堂を使いたい時は、メディアを博報堂に発注するとかで調整してるかな。

西島 独立系のアートディレクター(以下、AD)と組んだりもするんですか?

福部 ホッチキスの水口さんとプールの丹野さんくらいかな。基本的には8割5分博報堂の榎本とやってる。榎本はやりやすいし。CMとグラフィックを両方、自分とADだけでやりたいんだけど、両方できるADっていないんだよ。ものすごい限られてる。榎本はできる。

西島 榎本さんはcatchに引っ張らなかったんですか(笑)。

福部 彼は、独立するとしたら自分で事務所やりたいって言うと思うから、無理やりここに入らなくても、できることは一緒なので。博報堂のADは優秀だからいつでも独立できるしね。

西島 catchは一人でやられてるんですよね? こんな広いオフィスで寂しくないですか?

福部 自分で凄い寂しがりだと思ってたんだけど、ここにいることってほとんどなくて、基本的にはデザイン事務所にいたり編集室にいたりプレゼンしたり誰か常にいたりするからさ、寂しくないねん。ここでやる時もあるけど5%くらい。ほとんどデザイン事務所かな。基本的にはADと対面でやってる。「こんなこと考えたから画書いてよ」って。

西島 言葉が先か、画が先か、どういうプロセスで企画することが多いですか?

福部 トンネルの両方から掘っていく感じかな。昨年のMATCHはね、まず国語のビジュアルが浮かんで、他の教科も作ってみようかってなって。監督と話した時に、国語はグラフィックだけにして、数学と英語の方がムービーにした時に動きがあっていいからその2つにしようとなった。「青春ほどの難問はない」ってコピーもふと思いついて。最初にナレーションを書いて最後コピーをピッって入れることも多いかも。コンセプトは何となく初めにあるけど。

Reference:YouTube

西島 今年のMATCHも同じ感じですか?

福部 今年の「青春がないのも、青春だ」って企画は、錦織のやつをNYに撮りにいってる時にコンセプトが浮かんで、「CMで描かれる青春って絵空事のようなものが多いけど、実際はそんなことなかなかないよね」っていう。昨年、三角関係のCMをやった時に、いいねって言うターゲットもいたけど、一方では俺はあんな三角関係みたいな「難問」出題すらされたことないぞ! っていう非リア充の声も多くあり(笑)。でもMATCHってそういう人達に支えられてる面もあるのかなって。だから今年はそっちに目を向けようかと。実際自分の高校時代もそうだったし。

それで「青春が無いのも、青春だ。」とか「となりの青春は、青く見える」みたいな言葉が浮かび、最初は全然違う企画だったんだけど。まずコンテを作り、西野カナさんに見せて、それをインスピレーションにして曲を作ってもらって。音楽を作るって決まった段階で、コンテももう一度セリフが少ないものに変えようかって。せっかくなら音楽を聴かせたいから。

西島 環境によって方法論や、アウトプットを調整するんですね。

福部 俺の場合、何となくざっくり伝えたいことがある。CMの場合、コピー自体にストーリーがあると使いにくかったりするよね。企画とコピーバラバラだわっていう広告もあるじゃん。あと長い! みたいな。「とどけ、熱量」以来、榎本が5文字以上になると結構うるさいのよ。あんな短いのないよ! でもCMにおいてコピーは短いに越したことは無いなって感じ。

西島 MATCHのディレクターは先程も話に出ていた永井聡さんですよね? 福部さんて永井さんと組まれることが多い印象ですが、理由はありますか?
 

永井聡(ながい・あきら)
ディレクター
1994年に(株)葵プロモーション(現AOI Pro.)に入社した後、2003年に退社、CluB_Aに所属する。2010年に(株)葵プロモーション(現AOI Pro.)クリエイティブディビジョン本部長となる。2013年同社CCO(チーフクリエイティブオフィサー)となる。
参照:CluB_A

福部 単純に、永井さんのつくるCMの大ファンだから。今回のCMには初め審判がいなかったんだけど、永井さんがジャンプさせてくれた。グラフィックの時って完璧に自分らの手元でできるじゃん。不安なことも無く。でもCMって任さなきゃいけない局面があるじゃない。その時に安心して任せられる人じゃないと、正直頼みづらいよね。CMは、自分自身ではシュートできないと思ってるから。最後のシュートを打つのは監督。グラフィックはシューターになれるんだけど、CMはパスしかできない。それが分かるまでも10年くらいかかった。この人がやってイメージと違う風になったら、もうしょうがないって思わないと頼めないもんだなって。8割5分CMは監督のものだと思う。

西島 編集に対しても同じ考えですか?

福部 やっぱりほぼお任せしてるかな。1回仮編の後にQTもらって、自分が寝る前にiPodとかでボーっと見たときに「あれ?」と思ったら言うこともあるけど。仮編見る前が一番緊張するかも。

人材に関して

西島 先程お話出たんですが、企画する時、アシスタントとか入れないんですか?

福部 ブレスト式で、ADとコピーライターの1対1が好き。入りたいって言ってくる人がいないというのもあるけど、全部自分らでやっちゃうので任すことが無くて。だから誰かに入ってもらっても可哀想な気がして。

西島 誰か入れたらその人を立てたくなっちゃう?

福部 それもある。自分の案だったらめちゃくちゃコンテを詰めてた後でもバッサリ切れるんだけど、企画書書き始めて「あれ? この案めちゃくちゃ説明しづらいぞ?」っていうのは、何か軸がおかしいから。そういう案を無理やり出すと全体的に説得力が減るじゃん。

西島 福部さんとやりたい人いっぱいいるんじゃないですか?

福部 それがいないのよ(笑)。シャットアウトしてるのかもしれないね。だからもう一人いるとしたらWEB的な。でもWEBって切り離すものでもないかなって気がするんだけどね。

西島 あとはPR視点で企画できる人とか?

福部 PR視点てさ、やる気のある営業だと、その彼が一番もってたりするじゃない。媒体社とのつながりもあるし。今年のMATCHとかは、広瀬すずと広瀬アリスが記者会見を男子校でいきなりでてくるっていうのをやってて、それはワイドショーに取り上げられてた。男子校の異常な熱気が画面越しにも凄かった(笑)。ちゃんとした営業がいればいいんだなと。そういう営業が好き。

西島 そうすると打ち合わせ時間は長いんですか?

福部 ブレストは気付けば7時間とかやってるよ。画は書かないけど、こんな感じって言って書いてもらって。だいたい2,3回かな。コンテ組みした時にちゃんとはまってるな、分かりやすいなとか、まず作ってみる。増やしたり、減らしたり。最後に増やしたものが意外に選ばれるケースはあるよね。持ち寄りは断片?「青春がないのも、青春だ」みたいなのがやりたいって言ったりする。


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終始笑いが絶えずインタビューは進む

言葉に関して

西島 福部さんのコピー論を聞いてみたいんですよね。最初グラフィックやっていて、今CMもやっていてコピー(言葉)に対する考え方はどうなっているのか、と。

福部 自分だけで書いたコピーって、自撮りの写真みたいでだんだん気持ち悪くなって来てるんだよね。パブリックなところに出た言葉の方がCMの場合は向いてる。理想のコピーは「1億使っても、まだ2億」みたいなさ、コピーでしかありえないものが好き。最近思うのはコピーの再現性は大事かなと。その言葉面白いなって思ってtwitterにつぶやこうとしたときに書きやすいもの、再現しやすいものじゃないと拡散の足かせになるから。そういうところも大事かなって気がする。

西島 Yahoo!の見出しって文字数が決まっていて、分かりやすく、でも内容が分かりすぎるとダメっていうのがあるらしくて。タイトルのつけ方ってWEBだとダイレクトに数値化されるからコピーの勉強にもなりますよね。

福部 広告のコピーでいうと賛否両論がないとだめな気がする。

西島 良い意味で事件化されるコピーってことですよね。博報堂にいた時と、独立した後で、コピーに対する意識は変わりましたか?

福部 結局目立たなかったり残らなかったりなのは意味がない。新聞15段のコピーにはそういう意味でいうと今あまり興味がないけど、もし新聞15段やるとしたらめっちゃ目立つことしようと思うね。

西島 コピーを記号的に捉えてるんですかね?

福部 そういうことでもないかも。タイトル的ってことだと思う。なんかCMってさYouTubeで見られる時に必ず作品タイトルが付いてるじゃん。あれこそキャッチコピー。だって一番見られるわけじゃん言葉として。何しろ、再生される前に見られてるんだから。だから、あそこがビシッと決まればいいんだろうなと思ってる。でもあんまり人間が変わってないから、子供とか見てると「トントントントン ヒノノニトン!!」とかに反応してるわけ。それって昔から何一つ変わってなくて。ただどこ一番見てるのかなっていうのはあるかも。YouTubeのタイトルって絶対見てるよねとか、検索する時にそのワードが必要だったりとか。記号的といってしまえばそうなんだけど一番言葉が活躍しなきゃいけない所に、言葉を置きたいなと思う。catchはキャッチコピーのキャッチから来てるからね。映像でもキャッチするとか、企画のキャッチとか。

catchの今後について

西島 広告以外の展開についてはどうですか? 福部さん絵本とか作られてますよね?

福部 絵本は昔からやりたかったとか全然なくて、一人目の子供が生まれた時に作ってみたいなって思って。出版社に持ち込んだら発行してくれて、今それが第6部くらい。9冊くらい出してるかな。印税はほとんどって入ってこないね(笑)。結構売れてる方だと思うんだけど、今までの出したやつ全部で15万部くらいで、1冊の単価が1,200円くらいだから3000万、3人でやってるから1人約1000万だ。

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福部さんが手掛けた絵本「たべてあげる」

 

西島 印税って雑所得だから税金も取られますよね。

福部 源泉もとられてるから。大したことないよ。本出してる人って講演料がでかいんじゃない?

西島 広告講座の講師とかやってるんでしたっけ?

福部 お断りしてる。お金にならないからじゃなくて、教えたり本書いたりしたら、やっぱり審査する側にまわるというかバッターボックスに立てなくなる気がして。教えてる場合じゃなくて、その広告講座を聞きに行きたい(笑)。しゃべって整理されてそうだと思うんだけど、何かに縛られそうで。

西島 広告以外のアウトプットに関してはどうですか? ミュージックビデオ(以下、MV)とか映画とか。

福部 MVにも映画にも興味がないからな~。でもね、矛盾するけど最終目標はトイ・ストーリーみたいなのを作ること。本編ももちろんなんだけど、トイ・ストーリー2のエンドロールでNG集があって、CGで人形でNGなんて出ないのにわざわざ作ってたわけ。それが洒落てるな~と思って。こういう遊び心は素晴らしいなと思って。

西島 じゃ、広告が好きだから広告をがっつりやっていくと?

福部 そうね。最初の頃グラフィックが大好きだったし、今はCMが好きだし、また変わると思うけど好きなものをやらないと通用しないかなとは思う。これが流行ってるからとかでやると、好きでやってる人には絶対敵わない。

西島 連載依頼は?

福部 全く来ない。何でかな。来てもやらないと思うけど(笑)。

西島 書く人っていう印象がなくなってるんじゃないですか(笑)。

福部 そうかもしんないね(笑)。

西島 広告の仕事として理想型みたいなのはありますか? これ担当したいとか?

福部 理想はNIKEの「Write The Future」みたいなのがやりたいね。

Reference:YouTube

カップヌードルの青い甲冑やった時に、ワールドカップムービーTOP10みたいなのに入ってて、それは嬉しかった。いきなりNIKEのグローバルキャンペーンなんてできないじゃん。そうやってそこに近づこうかなって。

広告業界の若者へメッセージ

西島 今後、広告業界の若いクリエイターに向けてメッセージやアドバイスがあれば聞かせて頂けますか?

福部 1つは自分が好きなことをやった方がいいと思う。人生短いし。TCCの方が楽しい人はTCCやればいいし、海外の賞を獲りたい人はそこに向けて頑張れば良いし。『若い人がどんどん海外志向になって。国内空くから』っていう戦略ポジショントークもあるね(笑)。結局は若い時に、何で、自信つけるかじゃん。プチな結果でもいいし、場所もどこでもいい。海外で評価されるっていうのは難しいことだから全然それでもいいし。

西島 最後に。うちの編集部の小野に出して頂いたスターバックスラテにストローがついてないのですが、何かの嫌がらせでしょうか?

福部 ほんまや! 何で言わへんの?

小野 (・・・・)

西島 次回はちゃんとストロー出して下さい。有り難うございました。

福部 ストローが出ない会社って書かないでね(笑)。


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    遊び心に溢れたオフィス

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    デスクの後ろには数々のトロフィとご自身が手掛けられた絵本

西島編集長「編集後記」

福部さんに出会ったのは確か2002年、博報堂に務める先輩に「クリエイティブの方に話を聞きたい」と言って紹介してもらった時だと記憶している。一度きりだったので、その時はどういう方か良くわかっていなかったが、電通に入り、クリエイティブ局配属になって開いたTCC年鑑を見て驚いた。コピーライター、CMプランナーであれば誰もが獲りたがるであろうスタークリエイターの登竜門(と当時は思っていた)TCC新人賞を何と1年目で獲っていることが分かったのだ。「マジか、あの人。結構凄い人だったんだ」。その後私もTCC賞をいくつか頂き「あの時の学生です」と告白して飲みに行くようになった。

福部さんは飲みに行っても仕事の話はほとんどせず、ただニコニコ笑いながらバカな話をするだけだった。そんな福部さんが独立すると聞いた時、驚いて椅子から転げ落ちそうになった。「ニコニコしながらそんなこと考えてたのかよ!」と驚いた。

一方で、福部さんの近年の活躍を振り返ると納得もした。CM史に残るであろうカロリーメイト「とどけ、熱量」を当て、日テレの「0テレ」でコミュニケーションの本質を探り、日清カップヌードル「SAMURAI FUJIYAMA CUPNOODLE」で戦略的なおバカCMのお手本を示した。

福部さんは今日本で最もコピーライティングとムービーのプランニング能力をバランスよく合わせ持つクリエイターの一人ではないだろうか。コピーライターは言葉で表現しきってしまうため画が面白くならないという課題を持つ人が多いし、CMプランナーは面白い画は思いつくけど切れ味の良いタグラインを書けないという課題を持つ人が多い。かといって優秀なコピーライターと優秀なCMプランナーがタッグを組んで100%無駄のないアウトプットが産めるかと言われれば、そこにも疑問が残るだろう。CMのプランニングという行為においてベストなのは、やはり同じ人間が両方のスキルを合わせ持つことなのだと思う。

福部さんは言葉から、画から、という入口を決めていない。いや、入口を作っていないという言い方の方が正しいのかもしれない。「良いCMをつくる」というシンプルな目的へ向けて、無数の手口の組み合わせを、本人も気づいていない程の早さで検証し、企画として定着させているのだと思う。

コピーがかけるCMプランナーでも、画作りがうまいコピーライターでもなく、クリエイティブディレクター「福部明浩」として。

ラテにストローはつかなかったが、今後の活躍を見守っていきたいと思う。

西島知宏

街角のクリエイティブ ロゴ


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