人生はフィギュアスケートだ!
と書くとバカみたいですが、本作はもう映画でありながらフィギュアスケートです。
撮影の4ヶ月前からほぼ毎日スケートの練習をしていたという、マーゴット・ロビーのスケートのシーンがまずあっぱれです。だってトリプルアクセル決めてますからね。
「ラ・ラ・ランド」でライアン・ゴズリングがバカテクのピアノを披露してましたが、ハリウッドって役者が本当に技を披露するという凄みで見せることがあるので、「マーゴット・ロビー、オリンピック出れんじゃん!! 」と普通に思ってしまいました。そのくらい再現度が高いのです。
「どうやって撮ってんだろうね? 」と、思わず隣のチーマーに聞きてしまい一触即発となるほどでした。チーマー曰く、どうやらCG使っているみたいです。
出典:IMDb
そんなスケートのシーンもさることながら、スケートのシーン以外でもカメラがぐるぐる回り、それもまたスケートのように感じます。
トーニャに出て行かれ悲しみにくれる旦那のジェフを写し続けるワンカット、幸せそうな結婚式など、ここぞというときカメラがぐるぐる。ジャンプを決めたり、尻もちついたり人生ってまるでフィギアスケートだよなぁと、思わずにいられません。
またトーニャに始まり、トーニャの実母や、元旦那のジェフといった、登場人々のインタビューシーン(現在)を織り交ぜながら進行するのですが、それら食い違った証言をパラレルに見せるので、いったい何が真実なのかがわからない。
藪の中状態で頭もぐるぐる回ります。ジェフが「トーニャが銃で撃ってきた」といえばトーニャがドカンと旦那にお見舞いしながら「そんなことしてないわ」と否定する。
しかも観客に向かって否定するもんですから、さらにフレーム(第四の壁)が崩壊して、その瞬間映画にのめり込んでいた意識がふいに現実に押し出される。
もう、自分の居場所までもがぐるぐるしてるのです。
出典:IMDb
この縦横無尽さはまさにフィギュアスケート。ほとんど切れ目のない音楽も相まって、流れるように物語が進行し、飛べないのに飛んだ気になる。
モチーフと撮影方法が見事にシンクロしているのです。スケートなのにシンクロとはこれいかに。