とは言え、何となく放ってはおけない作品である
先程「片手落ち」と書いたが、素材は魅力的なのに、間抜けで杜撰なCIA職員や、取って付けたような日常ほのぼの触れ合いパート、どこか現実感の無いアメリカの外など、妙な戯画化が施されており、ドキュメンタリー寄りの物語を作りたいのか、あくまで実話をベースに物語に特化したいのかがわからず、もやもやしてしまう。ゲイリー・フォークナーのキャラ作り、ニコラス・ケイジの役作りに関してはとても上手くいっているだけに、惜しい。
出典:IMDb
しかも「どうですか、狂ってるでしょ、笑えるでしょ、でもね、お客さん。実は現代アメリカの戯画化でもあるんですよ。表層だけでなく裏に隠されたメッセージも読んでね」という制作側の意図が表出してしまっているので、笑わせられている、感動させられている感が強く、個人的には素直に楽しむことができなかった。
それでも、何だか憎めない、放っておけない作品であるのもまた事実であり、その理由の多くを占めるのが「ニコラス・ケイジが主演だから」というのも、これまた事実である。
ときに、ニコラス・ケイジはよく「仕事を選べ(笑)」と揶揄されるが、ニコラス・ケイジが仕事を選んだ世界を想像してみて欲しい。どうだろう、良い役でしか出てこないニコラス・ケイジ、良作でしかお目にかかれないニコラス・ケイジ、果たしてそんな世界が面白いだろうか。私は面白くないと思う。
「オレの獲物はビンラディン」、ぜひ観て欲しいとは言えないが、B級映画として観るならばまあまあの佳作で、ニコラス・ケイジ物として観るならば結構面白い。というか、ニコラス・ケイジ好きならば大いにオススメできる作品ではある。そんなわけで、機会があれば観てみてください。あればでいいので、本当にあればでいいので。