• MV_1120x330
  • MV_1120x330

「オレの獲物はビンラディン」評。ニコラス・ケイジは良いけれど

加藤広大 加藤広大


LoadingMY CLIP

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

radin_eiga

ニコラス・ケイジは良いけれど

過去の作品を持ってきて「ほれほれ」と撃つのは野暮なのだが、やはりサシャ・バロン・コーエンの不在は大きく、「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」や「ブルーノ」に比べると、善も悪も越えた徹底的な笑いは不在であり、ユーモアは空回りする。

本作はそもそもが実話であるし、架空の人物を現実世界に召喚した上記2作とは間逆であり、悪=タリバン(ビンラディン)という鋼鉄の法則があるので仕方がないとも取れるのだが、全体的に片手落ちな感じが否めない。冒頭、いきなりのハイテンションをカマすニコラス・ケイジにニヤリとできたかと思えば、失速するテンポに中だるみ感を憶えてしまう。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/01/063e4a8f57529ca818496897035ffa0c-e1516827697342.jpg出典:IMDb

もし、これが実在のゲイリー・フォークナーを追ったドキュメンタリー作品だとしたらどうだろう。面白いに決まっている。これは想像ではなく、映画の最後にはゲイリー本人がテレビ出演している映像などがオマケ的に流されるのだが、明らかにそちらの方が面白そうなのである。

と書くと何だか駄作のように思えてしまうかも知れないが、見所もそれなりにある。ニコラス・ケイジはキレッキレだし、キラキラした瞳をしながら猛烈に喋りまくる様は最高にキマっている。また、ただ単純に狂人ではなく、愛らしさや哀しさも巧みに表現している。

まさにニコラス・ケイジ独演会といった感じで、ファンなら大いに楽しめるだろう。ゲイリーに天啓を与え続ける「神」を演じるラッセル・ブランドも私生活で培った経験を大いに活かし、神というよりは完全にヤク中にしか見えず、B級感に華を添えている(褒め言葉です)。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/01/25ded2d859158b9a6b41f7e39549159e-e1516827800339.jpg出典:IMDb

しかし、ニコラス・ケイジが気合を入れ過ぎ、迫真の演技をしてしまったことによる弊害もある。ハイテンションでクレイジーなゲイリーを観ていると、段々と気の毒なオッサンを見ているような気分になってしまい、笑うことができなくなってしまうのだ。これを現代アメリカが産んだ犠牲者、アメリカの病理などというつもりはない。

酒を飲んでは一向に進まないタリバン掃討作戦に悪態を吐き、アメリカで生まれた物以外をディスりまくる、相手の迷惑を考えずに行動を起こし、良かれと思ってやった行為は空回りする。露骨な精神疾患の気もある。一見ブチ切れているように見えるが、実はそこまでブチ切れておらず、ギリギリのキチ○イ感を醸し出す。結果、悪い意味でリアルになってしまい「この程度の狂人、結構居ますよね」となってしまう。で、その狂人を見るのは結構辛い。

街角のクリエイティブ ロゴ


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP