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変な短篇小説7選

岡田麻沙 岡田麻沙


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「長いものには巻かれよ」とうそぶく人もいるけれど、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」なんて言葉があることを、私たちはみんな知っている。
あるいは、古代ギリシャの医者ヒポクラテスが残した警句「芸術は長く人生は短し」を逆説的に捉えて、こんな風に言ってもいい。「短いものが人生である」と。
そういう訳で、人生って変だなあと思わせる短篇小説を7つ、ご紹介する。
(著者50音順)

レイ・ヴクサヴィッチ『月の部屋で会いましょう』(2017)東京創元社

肌が宇宙服に変わって飛んでいってしまう流行り病がある世界で、将来の約束を交わす恋人たちのストーリー「僕らが天王星に着くころ」。機械人間の悲哀を切り取った「派手なズボン」。誕生日に恋人から贈られたセーターのなかで迷子になる「セーター」。40代にして授かった赤ん坊のおむつから鳥が飛び出して仰天する夫婦の一幕を紡いだ「排便」・・・。
本当に、もう、変な話ばかりである。

一体どうやってこんな設定を思い付くのか分からないし、思い付いたところで、それを書こうと決めた理由も、さっぱり分からない。ページを捲りながら零れ落ちる言葉はひとつ。「なぜ」。
レイ・ヴクサヴィッチの物語はいずれも「は?」「もう一回お願いします」の連続なのだが、謎の透明感をたたえているのは、登場人物がみな、初めて相対するものごとに対して実に丁寧なリアクションを見せるからだ。設定は最高に意地が悪いのに、人柄が、良いのである。何だろう、この、狂ったバランス感覚は。
どんな角度から光を当てても、注意深く観察しさえすれば人間を描くことは可能なのだと、ヴクサヴィッチは、とびきり奇妙なステップを踏みながら教えてくれる。

 

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