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締切を好きになるために擬人化してみたらどうなるのか

加藤広大 加藤広大


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締切の立場になって考えるということ

そんなこんなで、「もはや為す術なし、そんなこと考えてないでさっさと仕事をした方が良いのではないか、そもそも」と考えていたところ、ふと人間関係の基本である「相手の立場になって考える」という金言を思い出した。

なるほど、よく考えたら今まで私は「締切の立場」になって物事を考えたことが無かった。これはクライアントの立場ということではない。あくまで締切という存在を可愛らしく擬人化したうえでの立場である。

締切は常に製作者に寄り添っているものであるから、控えめに言っても「好き」なのであろう。そんな自分のことを好いてくれる締切のことを、私は「面倒くせぇ」、「延びねえかな」、「そもそも無かったことにならねえかな」と締切に聞こえるくらい大きな声で、日々発信してしまっている。

締切はそんな悪罵あくばを聞いたとて、文句一つ言わずに黙って側に居る。罵倒され続けている彼女の気持ちになると辛い。私が締切ならば腹いせに2、3日短くしたりしてしまいそうだ。

また、クライアント側も「あいつまた締切飛ばしてるよ使えねえな」、「あの人いつもそうなんだよねぇ」、「どうせ遅れたうえにわけのわからないもの作ってくるんだから」などと日々発信していることだろう。それも締切には聞こえている。

締切は私のことが好きなので、愛する人の悪評は聞くに耐えない苦行であろう。正直可哀想である。私が締切なら腹いせに2、3日延ばしたりしてしまいそうだ。

そこまで私のことを慕ってくれる締切の立場に立って考えてみると、今までとは全く違った景色が見える。締切は決して厳しいものではなく、優しく見守ってくれていたのだ。締切に罪は一切ない。首をはねられるべきは無茶な締切を設定する者と、締切を守れない私自身である。

無くなってはじめて分かる大切さというものもあるだろう。そう、締切が側にいてくれることは、人にとってかけがえのないことなのである。

そう考えると締切のために締切を守るのも悪くない。笑った締切の顔は、きっと可愛いと思う。どうやら、少しだけ締切のことが好きになれそうである。

こんなことを4,000文字も書いていたら、すっかり締切を過ぎていたことに気付いた。ああ、締切が泣いている。

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