変わり続けることにより、変わらなかったイギー・ポップ
作中ではイギー・ポップの幼少時からバンドの結成、活動中止や再結成まで、彼らの人生の一部が語られるわけですが、そのなかでも、様々な変化をしていることが見てとれます。それこそ音楽からドラッグの好みまでいろいろですが、反面、イギー・ポップは今まで一貫してイギー・ポップであるように見える。
これはなぜなのか? その疑問こそが、ただ単純に無責任に人の歴史を捉え、知っているふりをしていただけだったということを突き付けられます。
「あいつは変わった」、「昔の方が良かった」などというのは、人をくさす時のクリシェですが、これは自分が作り上げた他人に向かって批判しているだけであり、ただ自分が不健康になるだけです。「もっと健康になれ、俺のようにな」と目を見開いたイギー・ポップに言われているようであり、とても身につまされました。
人は変わる、これ当たり前です。しかし、変わり続けるからこそ変わらないこともできるのです。
ルー・リードが生まれてはじめて3つのコードを覚えたときから、ルー・リードであり続けたように、デヴィッド・ボウイが死してなお、デヴィッド・ボウイであり続けたように、イギー・ポップも彼の内包する「変わり続けるイギー・ポップ」とともに、イギー・ポップであり続けているのです。
『BLOOD AND GLITTER MICKROCK』私物
「ギミー・デンジャー」、大変に面白い作品でした。まさに今、撮られるべき人間が、撮るべき人間に頼み、撮るべくして撮られ、この瞬間にこそ観られるべきドキュメンタリーです。