知らなくても面白いから観てね、とは言えない
ミュージシャンを扱ったドキュメンタリー作品を、映画館まで行って観る人はどのような動機を持っているのか、ということについては、どんなに高く見積もっても「そのミュージシャンのことを好きだから」、「好きな監督が撮っているから」、「友達に連れて行かれて」、または「毎月第三水曜日は自分で映画の日だと決めているからなんとなく観た」くらいが関の山でしょう。
本作、「ギミー・デンジャー」もイギー・ポップ、厳密に言えば彼を中心にしてザ・ストゥージズの歴史を追ったドキュメンタリーであり、興味ある人は観るが、無い人は観ないというカテゴリにバッチリとはまる作品です。
Reference:YouTube
興味がある人に向けて言うならば、ジム・ジャームッシュがほぼ手弁当の状態から作り上げ、バンドメンバーとごく近しい関係者のみで構成されるインタビューは、今まで私達の頭の中にあったザ・ストゥージズ(そしてイギー・ポップ)というバンドの形を、工場でプレスされる鉄板のように、あるべき姿へと成形してくれます。
さらにMC5やメンバー同士がどんな関係だったのかも詳しく語られているし、未公開映像や写真も登場します。もちろん昔、西新宿のブートレグ屋で買ったようなものではありませんぞ。ちなみにシネマカリテの先行上映ではトークショーにギターウルフのセイジが来てたぞ羨ましいだろ、と言えば、きっと劇場に足を運んでいただけることでしょう。
しかし、興味が無い方に上記のようなことを言っても観る動機にはなり得ません。この興味がある、無いに関しては、たとえば「ゾンビ映画に興味がない」という人に、「観ないともったいないですよ」と語りかけたり、「ロシア料理に興味がない」という人に「人生半分損してますよ」と返したりするのと同じで、お互いになんの利益も得られない無駄な行為だというのは重々承知のうえで、敢えて言います。
「WikiでもYouTubeでもいいんで、軽く予習してから観てください。面白いっすよ」