Huluで原作を見やる。
出典:Amazon
原作を見て驚いたのは、タイムリープをしないことです。いや、一回だけ「もしあのとき・・・」といいながら過去に戻るシーンがあるにはあるのですが、はっきりとしたタイムリープではないのです。妄想? パラレルワールド? 一体なんなのか明示されません。典道の「時間が戻った!」的なリアクションもないのです。例の玉も出てきません。
で、いろいろ違いがあるにせよ、一番気になったのは、原作では(なぜか)電車に乗る前に気持ちが変わり、結局駆け落ちせずに駅から戻っていくのですが、今作では電車に乗り込みさらに踏み込んでいきます。その後、原作ではプールに忍び込み、今作では海に入水するのです。原作では一夏の青春を切なく描いているだけで、死の気配はあまりしません。
実は、原作でもまた「これって心中?」「駆け落ちっていうんだよ」というやりとがあったのですが、もしかしたら原作にあったそのやりとりを膨らませて、アニメ版は脚色されたのではないでしょうか。原作では駆け落ち失敗バージョン。映画では心中失敗バージョンとして。
原作を見て、改めてアニメにする過程を想像すると、アニメならではのイマジネーションと強度を持った作品にしようという意思を感じ取ることができました。アニメだからできるメタファーをふんだんに入れながら、言葉ではなく、すべて映像で語るんだ! という昨今の邦画やドラマとは逆を行く、そんな原作の持つ潔さをそのまま引き受ける志の高い作品であるような気もして、多少難解でも、声優が下手くそでも、今回の脚色にはなかなかの好印象を抱きました。
アニメにはまだ、セリフで語りすぎなくてもいいという自由さが残されていたのです。もしこれを再びドラマでリメイクすればきっとさらに説明過多な、映像の力を信じない橋田壽賀子劇場みたいな作品になっていたような気がして、アニメでやることの意味に触れた気がしました。
さて、もう一つ。原作では、水泳勝負で賭ける品が「スラムダンクの最新刊」なのですがそれが今作では「ワンピース最新刊」になっていたり、原作でプレイしているゲームがスーファミのスーパーマリオから、今作では変なレトロゲーになっていたり(ヴァーチャルコンソールなのかな)と、現代版に変更されているのですが、男子たちが好きな女の子を叫ぶシーンでは、原作同様「観月ありさ〜」のままなのです。今時観月ありさはありえません。ナースだとしたらそろそろ主任になっている年齢です(それはないか)。そこは広瀬すずとかにしなさいよ!! ・・・と思ったのですが、もしかしたらこれは現代の話でも昔の話でもないということがいいたかったのでしょうか。あの頃でもあり、この頃でもあるという。そういえば携帯電話が出てこないし。このことからもあの世とこの世の間を描いた話であると捉えることができますよね(ウインク)。
今ならHuluで視聴できますのでよかったら見てみてください。2週間無料だってさ。
ということで、姪っ子たちも最終的には「意味が分からなかったけど面白かった」と言ってくれたのでホッとしています。子供はアニメってだけで楽しめるんですね。もし、気になるアイツを誘っていたら気まずい結果になって、ふられていたかもしれません。
最後に脚本の先生が言っていた印象的なフレーズをお送ります。
「わからない箇所は、つまらない箇所と思われがち!!」
スタッフのみなさん、お疲れ様です!!