特殊なタイムリープ
とはいえこの話を特に難解にさせている元凶は、やはりタイムリープだと思います。タイムリープとは「もしあの時、違う選択をしていたら」と過去をやり直せるというフィクションあっぱれな作用のことです。
ヒロインのなずなが海で綺麗な玉を拾うのですが、その玉を投げるとあら不思議! 時間が戻るのです。
出典:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」公式Twitter
もちろん、時間が戻るたびに姪っ子達が「は? どうゆうこと?」とざわつきます。
「時間が戻ったんだよ」「なんで?」「玉を投げたから」「意味わかんない」。・・・たしかに意味はわかりません。いろんなフィクションに触れているから慣れているだけであって「そういうもんだから」って特に何も考えず観ているだけです。実に大人な対応です。大人な対応が多くの作品を支えてきたのです。
しかしこのクソガキどもは作り手と共犯関係を結ぶ事ができません。「こういう作品よくあるじゃん」という作り手の甘えを決して許さないのです。態度としては、なかなか考えさせるものはあります。あるのだけれど、なんだかだんだん腹が立ってきました。
「映画を紹介する記事ならこの街クリに載せていいよ」という編集部様からのご通達も今回で10回目。数々の素晴らしいライターさんが達者な文章で様々な作品を紹介する中、まるでくぼみのような記事を書き街クリのコラムを読んで初めて腹がたったと罵られる事もありました。だからここらでしっかり映画と向き合った文章を書こうと、ユンケル黄帝液を飲んで気合いを入れてきたのです。しかしこう姪っ子たちに邪魔をされてはその計画はおじゃんです。もういいや。俺はこのままでいいやと、すぐに諦めてしまうのは誤ってユンケル自己肯定液を飲んでしまったせいでしょうか。
もし、姪っ子達と来ていなければ。もし・・・あの時、気になるアイツを誘っていれば・・・。
出典:YouTube
プギャーー!!!
話を戻して、今作のタイムリープなのですが、なんともお約束を超えたところにあるので、これまたより分からなくなりました。
例えば何度目かのタイムリープで、打ち上げ花火を横から見ると平べったくなるのです。普通は、その世界の秩序とか理屈とかまではタイムリープで変わる事はありません。人間関係が変わったりする事はあるけれど、物理法則までもが変わる事はありません。打ち上げ花火はどこから見ようが丸い。つまり平べったくなるということはこの世のこのとではありえません。
この種の混乱が訪れた時、まず一番わかりやすい整理の仕方としては、主人公は死んでいると考えるのが手っ取り早い。
主人公が死んでいれば、この世の物理法則で物事を考える必要はないのです。
そもそも冒頭から、海の中にどんどんと引きずり込まれるかのように落ちていく典道に手を差し伸べるなずなのシーンから始まる辺り、あながち間違ってもいない気がするのだがどうでしょうか。
典道が願えば電車の行き先が変わり、電車は水上を突っ切ります。まるで千と千尋の神隠しの、水辺を走る電車です。あれも確か死を連想させるシーンでした。
出典:IMDb
また、なずなの父が海で浮かんで死んでいるカットが挿入されますが、なぜか玉を掴んでいます。つまりその玉によってなにかしら救おうとして失敗した可能性があり、典道もまたなずなを救おうとしていることから、典道が死ぬ事も暗示されている。
他にも、二人で遠くに行く旨を聞き、典道がなずなに「これって心中?」と聞くシーン。おそらく心中の意味を知らなかったのでしょう。そしてなずなは「駆け落ちっていうんだよ」と正すのですが、もしかしたら心中だったのかもしれないです。
ロケ地もどこか死を匂わせる。劇中でモデルになっている灯台はおそらく
一体いつどこで死んだのかはわかりませんが、たまたま死んだ部分を見せてないだけであり、この話においては死んだという確定的な事実がそこまで必要じゃなかったのかもしれない。かもしれない祭りです。
なんにせよこのタイムリープを含めて、言い切らない部分がやたら多いので、とても疲れてしまいました。
好きな人と一緒にキュンキュンできるデート映画かと思い、せっかく気になるアイツを誘ったのに、終始首をかしげられる事態になろうとは。ああ、嫌われる。もし、バカな姪っ子たちを連れてきていたら、多少わからなくてもアニメというだけで喜んでくれていただろうなぁ・・・。妹にも感謝されただろうし・・・もしあのとき
出典:YouTube
プギャーー!!!
さて、ここまで妄言を吐き続けて、急に不安になったので原作のドラマを観る事にします。死んでいるのか、いないのか。その辺が描かれているのかが気になりました。