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『コンビニ人間』解説

門松一里 門松一里


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『コンビニ人間』
村田沙耶香(2016年)文藝春秋


出典:Amazon

コンビニエンスストアは、音で満ちている。客が入ってくるチャイムの音に、店内を流れる有線放送で新商品を宣伝するアイドルの声。店員の掛け声に、バーコードをスキャンする音。かごに物を入れる音、パンの袋が握られる音に、店内を歩き回るヒールの音。全てが混ざり合い、「コンビニの音」になって、私の鼓膜にずっと触れている。
(引用:『コンビニ人間』村田沙耶香(2016年)P3

村田沙耶香の小説『コンビニ人間』は、2016年の第155回芥川賞受賞作です。芥川賞と直木賞はペアなので同時に発表されますが、ペアと言ってもかなり雰囲気が違います。前回お話した直木賞の荻原浩の小説『海の見える理髪店』が、すっと心に残る作品であるのに対して、芥川賞の『コンビニ人間』はとても魅力的でありながら、少し違和感がある作品です。

ぜひ小説を読まれた後でお楽しみください。
 

あらすじ1

「コンビニの音」が聞こえる古倉恵子は、大学一年生からずっとスマイルマート日色駅前店で働いています。現在36歳で、入学してすぐの学校の行事で、能を観た帰りに迷い込んだオフィス街で開店スタッフ募集のポスターを見つけてから、一度も就職せずに18年間、日色駅前店でアルバイトをしています。恋愛経験はなく、未婚で一人暮らしです。

サボり癖があった2人目の店長から「体調管理をして健康な体をお店に持って行くことも時給の内だ」(P89~90)と教わったので、無遅刻無欠勤で病気もありません。

二十代のころに就職活動をしたこともありますが、コンビニのバイトしかしていないのでめったに書類選考も通らず、面接にこぎつけてもどうして何年もアルバイトをしていたのか説明できません。

夢でもコンビニのレジを打ち、「いらっしゃいませ!」という自分の声で夜中に目覚めてしまうような、文字通り寝ても覚めてもコンビニエンスストアのことしか考えられない人――それが古倉恵子でした。
  

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