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横山秀夫のミステリー小説まとめ

街クリ編集部 街クリ編集部


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この作家ならがっかりさせられることがない、横山秀夫はそう思わせる作家の筆頭です。さらに、そう安心して読んだ一冊に新しい魅力を発見させられ、次は積極的に彼の作品を探すよう仕向けるすごい作家でもあります。まだ読んだことがない人は、是非だまされたと思って読んでみてください、後悔させません。

1. 『陰の季節』
(1998年)文藝春秋

作家・横山秀夫の第一作で、第5回(1998年)松本清張賞受賞、2000年から2004年、2016年にテレビドラマ化もされました。D県警本部を舞台にした4篇の警察小説短編集で、表題の『陰の季節』の他に、『地の声』『黒い線』『鞄』が収録されています。

表題作の『陰の季節』は、警察官でも捜査を担う刑事部署でない刑務課に属し、警察官の人事を担当する二渡真治警視が主人公です。発端は、刑務課の重要な仕事である退官幹部の天下り先斡旋にあたり、任期を満了した尾坂部元刑事部長が退任を拒んだことから始まります。尾坂部のポストにはすでに次の退官幹部の再就職が決まっており、なぜ天下り先企業に居座るのかを二渡が追いかけます。

刑事の颯爽とした活躍を描くのではなく、しかし人事担当警察官の、刑事よりもさらに鋭い人を見る目と、迷宮入り事件の謎に迫る洞察力に目を見張ります『地の声』は警察職員の賞罰を扱う監察官、『黒い線』は鑑識課で似顔絵を担当する女性巡査の失踪を追いかける女性係長、『鞄』は県議会の議会対策に走り回る秘書課課長補佐を主人公にして、警察内外の人間関係を鋭く描き、いずれにも二渡がスパイスとして登場します。

横山秀夫の警察小説は、警察組織の知られざる内部事情を知るとともに、そのムラ社会に生きる人間の内面が硬質な筆致で記され、深い味わいがあります。嬉しいことに『黒い線』に登場した似顔絵担当の女性巡査は、部署を変え短編集『顔 FACE』(2002年、徳間書店)に再登場し、女性の視点での警察小説を読ませてくれます。こちらもぜひおすすめの作品です。

 

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