皆さんご存知「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部が、テレビアニメ化されることが決定しました。この発表は、4部を心待ちにしていたファンにとって、非常に嬉しいニュースだったのではないでしょうか。
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かく言う私もジョジョのファンでありまして、昨年ついに、第4部の舞台である宮城県仙台市に物見遊山し、どこを見ても広瀬、広瀬という広瀬康一へのリスペクトに感動し、江陽グランドホテル(杜王グランドホテル)のトラウマになりそうな噴水に狂喜し、むかで屋にて「吉良吉影様 ボタン付け代として」という領収書を32歳にもなって嬉々として発行していただき、確定申告の際に「これは果たして、経費で落ちるのだろうか」と困惑するなどなど、書ききれないほどディ・モールトベネな経験をさせていただきました。当たり前ですが、ボタン付け代は経費では落ちませんでした。
これがッ! 領収書ッ!
旅の思い出はこのくらいにしておいて、「ジョジョの奇妙な冒険」には、第3部から「スタンド」という超能力が具現化したものが登場します。と、言われても知らない方は困りますよね。じっさい、スタンドの決まり事や定義は複雑かつ曖昧なので、この記事では
スタンド=超能力・守護霊みたいなもの。
スタンド使い=その超能力を使う人(本体とも言われる)
くらいに把握していただければ大丈夫です。この「スタンド」には「スター・プラチナ」、「キラー・クイーン」などの名前が付けられていて、第4部は多くの場合、そのスタンド名は洋楽のロック・バンドや曲名に由来しています。
今回、ジョジョ第4部がアニメ化されるニュースを目にして、私に「人間賛歌」という素晴らしい四文字熟語を教えてくれたジョジョの奇妙な冒険に、何か自分らしい恩返しができないかと考えたところ、名前やスタンドの元ネタになったアーティスト、曲を紹介するという非常に単純なことを思い付きました。なので今回、その音楽的なネタを分かる範囲で全て、ご紹介させていただきます。結果、記事がものすごく長くなってしまいました。最初に謝っておきます。
ちなみに、ジョジョのキャラ、スタンド紹介と、元ネタのアーティスト、楽曲を解説するのを半々くらいで紹介していくスタイルを取ろうと思います。そしてなるべく、ジョジョに興味がない方でも、音楽豆知識として楽しめるようなお話にしていきたいと思います。
前置きが長くなってしまいました。それでは本題に入ります。
クレイジー・ダイヤモンド/東方丈助(ひがしかた じょうすけ)
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第4部の主人公、東方丈助のスタンド「クレイジーダイヤモンド」は、英プログレッシブ・ロックバンドの雄、「Pink Floyd(ピンク・フロイド)」が1975年に発表したアルバム「Wish You Were Here」に収録されている楽曲「Shine On You Crazy Diamond」に由来しています。動画のサムネイルにも表示されている、伝説的なデザインチーム、「ヒプノシス」がデザインを手がけたジャケットが印象的です。
ちなみに、アルバムの邦題は「炎~あなたがここにいてほしい」となっており、「あなたがここにいてほしい」という部分はメンバーからの指定でありそのまま付けられたのですが、「炎」は後付けです。いくらアルバムジャケットで人が燃えているからと言って、単純に炎と付けてしまうこのセンス、最高です。邦題、大好物です。
この曲は、アルバムの最初と最後に2分割されて収録されているのですが、まさしく東方丈助のスタンド能力である、壊れたものを直したり、状態を直すという能力に、ぴったりなエピソードです。
エコーズ/広瀬康一(ひろせ こういち)
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ある意味、第4部のヒロインとも言える広瀬康一が操るスタンド「エコーズ」は、音を相手に貼り付けると、その貼り付いた音がさまざまな効果をもたらすという能力を持っています。「ドンッ」という音を貼り付けたら、相手にはその衝撃が伝わるような感じでしょうか。作中、スタンドは彼とともに成長し続け、「エコーズACT3」では、殴った相手を重くする能力も付与されます。
その「エコーズ」は、東方丈助と同様に、「ピンク・フロイド」が1971年に発表された「Meddle」という名のアルバムに収録された楽曲から付けられています。そして、「Meddle」の邦題は「おせっかい」です。もはや邦題自体がおせっかいです。
これまた、アルバムジャケットはヒプノシスがデザインしており、音波で波を形作る水や、そこに映る耳が印象的です。康一くんのスタンドとピンク・フロイドの楽曲は、音がさまざまな効果をもたらすという、「音(音波)」という共通点を持っています。
ちなみに、このスタンドは「聞く耳を持たない相手には通用しない」という弱点があるのですが、これはまさにプログレッシブ・ロックのことを如実に言い表しています。
ザ・ハンド/虹村億泰(にじむら おくやす)
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どんなに突っ張っていても、心根は優しい不良であり、時折お茶目な義理人情に厚い男。虹村億泰のスタンド「ザ・ハンド」は、右手で掴んだあらゆる物を、空間ごと削り取るという恐るべき能力を持っています。
元ネタは、アメリカが誇る、もしもロックの星座があったなら、ひときわ輝く一等星のようなバンド「The Band(ザ・バンド)」より付けられています。ザ・バンドについては、もはや説明する必要もないでしょう。名前負けしているロック・バンドは、世の中に数多存在しますが、ザ・バンドはその名の通りザ・バンドなのです。
紹介させていただいた曲は、マーティン・スコセッシが監督したことでも有名な「The Last Waltz(ザ・ラストワルツ)」より、「I Shall Be Released」です。実はこれ、ボブ・ディランの曲なのですが、そうそうたるゲストが全員集合しているのと、控えめなジョニ・ミッチェルが可愛くて仕方ないのでこれを選曲させていただきました。
余談ですが、このラスト・ワルツは通常のライブビデオとは違い、マーティン・スコセッシが楽曲をすべて分析し細かく台本を決め、大量のカメラを用意して作り上げました。そして、この撮影に参加したカメラマンは、後に多くの方が有名になっているそうです。
ヘブンズ・ドアー/岸辺露伴(きしべ ろはん)
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スピンオフ作品も多数創作され、もう一人の主人公と言っても差し支えない、4部の舞台である杜王町に住む偏屈漫画家、岸辺露伴。彼が操るスタンド「ヘブンズ・ドアー(天国への扉)」は、相手の人生を読み取ったり、記憶を書き換えたりすることができる能力を持っています。
スタンド名の由来は、「Bob Dylan(ボブ・ディラン)」が1973年にリリースしたシングル「Knocking on Heaven’s door(ノッキン・オン・ヘブンズドアー)」から取られています。映画「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」のサウンドトラックにも収録されていています。そういえば、ビリー・ザ・キッドの射撃のように、岸辺露伴はペン先からインクを飛ばしていましたね。
バックを務めるのはブッカーT、ラス・カンケル、ロジャー・マッギンなど、当時のロックを支え続けた一流ミュージシャンが勢揃いし、メンバーの一人一人がライブをやるだけで、フェスが開催できそうな勢いです。
ザ・ロック/小林玉美(こばやし たまみ)
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アフロをガチガチに固めたようなリーゼントが特徴的な小林玉美も、脇役でありながら、非常に立派な元ネタが設定されています。彼のスタンド、「ザ・ロック」は、罪悪感を相手に感じさせることで、胸に錠前が出現し、その重みで相手の心身に重圧を与えるという、外注先を詰めるのを趣味としているクライアントのようなスタンドです。
スタンド名は、大英帝国が生んだモッズバンド「The Who(ザ・フー)」が1973年に発表した「Quadrophenia (四重人格)」に収録された同名曲に由来しています。アルバムは、とあるモッズ少年、ジミーの多重人格を軸にして物語が展開していきます。ジミーと言えば、このアルバムを元にしたモッズ御用達映画「さらば青春の光」でも主人公となっていますね。ある意味スタンドが使えそうなスティングも出演しています。